RS☆R SUPRA From ドリフト天国[2005.12] TOP > web マガジン > ピックアップマシン バックナンバー > RS☆R SUPRA [JZA80]
唯一無二の存在感、
圧倒的な戦闘力!
GT選手権トップドライバーが”勝つことを追求!
RS☆RSUPRA[JZA]
今年から選手として参戦しはじめたMAX織戸こと織戸学。GT500のトップドライバーがD1マシンに選んだのはJZA80スープラだった。D1では初登場の車種だけど、織戸が培った人脈とレーシングドライバーの経験、そして3年間D1審査員を務めてきたノウハウをフルに投入して、初戦からキッチリとD1上位陣に食い込む戦闘力を手に入れた。かかっている技術力も金額もハンパじゃない。まさに至高のドリ車だ。
「D1いち△□」の称号が多ければ多いほど織戸はヤル気を増す!
 D1参戦に際し、織戸が選んだマシンはスープラだった。「GTでもプライベートでも乗っている大好きなクルマだから」という理由もあるけど、スープラでD1に参戦しているドライバーがいないというのも理由のひとつ。FD3SやS15ではほかのトップ選手と比較されてしまい、独自の路線を打ち出しにくいからだ。
 とはいっても、ほかのトップドライバーがスープラを選ばなかったのには理由がある。フロントヘビーなスープラは、トラクションがかかりにくい。それに、高速クルージング性能を重視した足まわりはキビキビとした特性にしあげづらい。ハイレベルなドリフトをしようと思うと厳しい面も多いのだ。
 それでも織戸には、「なんとかなる」という勝算があった。彼には長年のレース活動で培ったノウハウがあるし、D1の審査員としての経験もある。クルマづくりで少しでもスープラの弱点を補い、ネガはパワーで打ち消し、ボディワークやグラフィックで派手さを演出すれば、きっと最前線で戦えると考えたんだ。
 ロールケージとボディの製作は、スーパーGTで織戸がお世話になっている土屋エンジニアリングに依頼した。監督の土屋氏は、織戸が全幅の信頼をおく人物で「生粋のレース業界人にもD1に興味を持ってほしい」という狙いもあった。
 アーム類の製作やナックル加工などはネココーポレーション、エンジン関係とトータルメンテナンスはオートプロデュースBOSS。車高調のセッティングはメインスポンサーであるRS☆Rが担当し、まさに必勝の布陣。外装は織戸が講師を務めている自動車専門学校・NATS(日本オートモービルカレッジ)に依頼しているのがおもしろい。
 マシン製作にあたって織戸が目指したのは、まず軽量化。絶対的な軽さではハチロクやシルビアにはかなわないけど、ドアやリヤハッチはGT500マシンから拝借したカーボン、ボディパネルも剛性に関係のないところは切り取っている。とにかくノーマル比での減量はD1マシンいちをめざした。
 なんでもイチバンじゃないと気が済まない織戸は、軽量化だけじゃなく、パワーもD1いちを狙った。680馬力はD1界最強だろう。そしてオリジナルのワイドフェンダーを装着してボディ幅もD1いち! 組み合わせるGTウイングの幅も、それまでD1最大幅だったT&Eソアラよりも5ミリ幅広なのだ。
最高の足を得たスープラは、タイヤのエア圧でトラクションをコントロール!
 2005年に入ってから製作がはじまった織戸スープラは、突貫工事で4月の第2戦でデビュー。それでもボディやサスペンションの設計はうまくいっていたようで、いきなり8位に入賞した。
織戸にとっても、初めてD1を経験してみると、イメージとはやっぱりちがいがあったそうだ。
「最初はGTカーのようにクルマの限界を極限まで高めておいて、オレがキッチリコントロールすればいいと思っていたんだ。でも追走すると、後追いで相手に合わせられなかった。速すぎたんだよね。それにイザというときに使えるマージンも少なすぎた」と、セットアップの方向性も変化していくことになる。
 ただ、前後の重量バランスが悪くてトラクションがかかりづらいというスープラの弱点はどうしようもなかった。軽量化をすると、どうしてもリヤが軽くなってしまうからなおさらだ。
 そこで、サスペンションはトラクションを増やす方向でセッティング。前後の重量配分を改善するために、リヤのサスペンションメンバーに20kgのウエイトを載せたりもした。
 ネココーポレーションで製作されたアームは、織戸スープラのためのスペシャル品。調整部分を大きくとり、コーナリング限界の高いジオメトリーを設定できるようにした。ロールセンターはアームの取り付け位置自体を変えることで補正して、荷重移動をさせたときでも姿勢変化がおおきくならないように対策している。調整式アームは、クラッシュの多い織戸でもしっかりとアライメントを出せるのでメリットは計り知れない。
 しかし、レーシングカーのような足まわりを製作したため、トラクション性能が必要以上に高い。そこでタイヤのエア圧調整でトラクションを抜くようにした。なにしろD1の現場では、エア圧の調整がもっともラクにできるセッティングだ。それでもダメな場合だけ、車高やアライメントでセッティングを変えていく。でもほかのD1マシンに比べるとエア圧は低め。4キロ、5キロが当たり前だった富士スピードウェイでも、2.6キロだった。
 ここまで読んだ読者なら、このスープラの戦闘力の高さがイヤでもわかっただろう。なのに多忙なドライバーはなかなかテストもできない。セッティングはたいてい前日練習日。さすがに煮詰めきれないところも多いという。織戸自身のドライビングも、まだまだ進化途中だろう。
 マシンもドライバーも、可能性はまだ底知れない。'06シーズン、織戸とRS☆Rスープラは、もっと豪快なドリフトを見せてくれそうだ。
3.4リッター化で680馬力のD1最強エンジンを搭載!
○TURBINE:TO4Z ○ENGINE:HIGH-CAMSHAFT/FORGED PISTON/CONROD/STROKE UP CRANKSHAFT ○CONTROL:POWER FC/SBC i-D(MAX BOOST 1.6kg/cm²) ○DRIVE-TRAIN:ORC 709CLUTCH/HOLINGER SEQUENTIAL 6SPEED TRANSMISSION/KAAZ LSD ○SUSPENSION:RS☆R i☆SHOCK SPORTS&Ti2000SPRING(F:20kg/mm R:18kg/mm) ○BRAKE:F:Project μ BRAKE ROTOR/CALIPER R:JZA80 LATE MODEL ROTOR/CALIPER ○WHEEL:A.V.S. MODEL T6(F:9J-18off+22 R:10J-18off+15) ○TIRE:ADVAN NEOVA AD07(F:235/35-18 R:265/35-18) ○AERO:RIDOX(F/S/R/FENDER/BONNET) SARD GT WING
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3.4リッター化で680馬力のD1最強エンジンを搭載!
第3戦までエンジン本体は3リッターのまま。その後GTスープラにも搭載される3S-GTエンジンやVマウントも検討したが、第5戦から3.4リッターに排気量アップ。TO4Zタービンにブースト1.6キロで、最大で680馬力だ。ここまでパワフルだとサードの3層ラジエターをもってしても連続走行では水温が120度まで上がることもあり、冷却対策は改善の余地ありとのこと。 強度アップのためにストラットタワーとバルクヘッドをつないでいるため、パワステタンクやブレーキマスターバックが装着できなくなった。結果、パワステタンクは移動しブレーキはマスターバックレス。GTマシン同様に踏力が必要になるが、それに慣れた織戸には、逆にダイレクトでコントロールもしやすくなっている。サージタンクも大容量化され、電子スロットルは取り払われ、Q45純正スロットルに変更されている。
FOOTWORK
ナックル加工によるクイックステアが武器!
必須の切れ角アップは、タイロッド側とナックル加工。同時にクイックステアリング化している。第3戦の練習走行などで、ロアアームのナックル側取りつけ部のピロボールが外れるというトラブルに見舞われたため、純正のボールジョイントに交換して対策した。アームの調整でキャスターを寝かせ、ステアリングを切ったときのタイヤの接地性を高めている。ノーマルが4度ちょっとなのに対して、7度近くまでついている。 リヤにはディフューザーも装着してダウンフォースを稼いでいる。両脇のフィンが外側を向いて開いているのは、角度をつけたときに風を当てて流れすぎるのを止めよういう狙いと、タイヤスモークをサイドに排出しようという狙いがある。サスメンバーのすぐ後ろについている円筒形の黒いパーツは20kgのウエイト。重量物はできるだけ低い位置につけるという、レーシングカーのセオリーにならって装着。効果は絶大だったそうだ。
車高調はRS☆R。市販品をベースにセッティング変更を施している。減衰力は低速域を下げて、高速域を上げる方向だ。ほとんどのアームやリンク類を調整式のものに交換しているが、リヤのロアアームだけは純正を使っている。取りつけ部もゴムブッシュだ。LSDは織戸の好みによって、イニシャルトルクを最大限に強めている。スタビは純正のまま。今後RS☆Rの可変式に交換する予定だ。
 
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INTERIOR
トグルスイッチ博覧会!? これぞ織戸流“ヤル気にさせる”コクピットメイクなり!

整然と20コ以上のスイッチが並ぶが、パワーウインドウやワイパーなど純正の機能を移植しているのがほとんどで、クルマの制御に関係のあるのはじつは5コくらい。インパネにたくさんのスイッチを並べたがったのは織戸のリクエストで、走行前にスイッチをパチパチ入れる行為が気分を高める儀式なのだという。ダッシュボードはカーボンで製作。メインのメーターはマックスレーシングのレース用だ。そのすぐ左に並ぶスイッチはネオン管などの電飾関係。ステアリングやシートは織戸スペシャル。 ピラミッド型に入れられたパイプが特徴のワンオフロールケージ。土屋エンジニアリング独自のノウハウで、対角線方向の力の入力を分散させるのだという。織戸が「軽く作ってほしい」とリクエストしたためドライバーを守る部分以外のパイプは、かなり細いものが使われている。シートポジションは、当初「GTマシンのように運転席を後ろに下げてくれ」と織戸がリクエストしたが「それだと実際は角度がついていないのに角度がついているようにかんじてしまう」というBOSS藤岡サンの指摘で前寄りに変更された。
 

ペダルはオルガン式に変更されている。これもGTマシンからの移植。シートポジションを前寄りにしたため、ペダルの位置もだいぶうえになった。かかとの部分は80ミリほどかさ上げされているそうだ。    
DRIVE-TRAIN
 
第5戦から、スープラ純正のゲトラグ6速ミッションからホリンジャーの6速シーケンシャルに変更。強度的に問題があったわけではなく、HパターンからIパターンになることと、ギヤ比を高回転寄りに設定できることのメリットを考えてのチョイスだ。
EXTERIOR
GTマシンを参考に食力も考慮したRIDOXエアロで武装!
 
エアロパーツはすべて織戸自身がプロデュースするリドックスブランド(ウイングのみサード)。フェンダーは片側約40mmワイドで、ボンネットは来年発売予定の新作だ。前後のディフューザーはGTマシンを参考にデザインされ、ほかのD1マシンから1歩も2歩も先を行くレベルで空力を考慮している。ウインドウ類はすべてアクリルだ。
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