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ORC with トップシークレット FAIRLADY Z  [Z33]実力未知数の現行型NAモデルは、幾多のトラブルを乗り越え、いまポイント争いの最前線へORC with トップシークレットFAIRLADY Z  [Z33]
くわしいファンならもう知っているかもしれない。昨年のシリーズチャンプが今年ハンドルを握るこのZ33は、昨年のライバルマシンだ。いや、ライバルにもなれなかったといったほうがいいのかもしれない。名手、出水田がドライブしたのにもかかわらずトラブル続きでノーポイント、予選通過したのもわずか2回に終わった。しかし、今年の開幕戦ではいきなり9位に入賞し、続く第2戦では6位入賞。三木とのシンクロがよほどいいのか、なんらかのモディファイがあったのか…。第3戦でのエンジンブローを機にさらに大幅なモディファイが加えられたZ33は、いよいよ第4戦でそのポテンシャルのすべてを発揮することになるだろう。
なにもかも手探りだったZ33のデビュー
2004年シーズン開幕2ヶ月まえ、チームORCはZ33での本格参戦を決断した。実績のあるS15にするというチョイスもあったが、あえて1台もいない現行車Z33でのエントリーを決めたのは「我々はチャレンジャーですから、どうせやるならまったく新しいクルマがピッタリだと思ったんですよ」というチームORCの監督、鳥海氏。ターボエンジンに載せ換えることは計画どうりで、当初はSRエンジンが候補にあがっていたが、車両製作を担当したトップシークレット永田氏からの提案でRB26エンジンに変更。これは現在D1で必要不可欠とされる500馬力オーバーを考えると、SRエンジンよりも安く、丈夫に製作できるとの考えからだ。ボディもフルスポット増しで補強。軽量化も徹底して、1370キロまで車重を落とした。ケイオフィスの足まわりは風間靖幸がベースを作り、ドライバーに決まった出水田の好みで小変更した。そうしてできあがったZ33なんだけど、出水田は「D1で勝ち負けを考えられるクルマのデキじゃなかったね。パワーはあるけどそれを生かせていない。角度をつけたドリフトがぜんぜんできなかった」と当時を振り返る。とは言っても、第3戦、第4戦では予選を通過し、急造マシンのポテンシャルの高さを見せつけたのだから「クセの強いクルマを得意とする」と言われる出水田の適応力は特筆するべきだろう。しかし待ち受けていたのはトラブル地獄。デフブローにはじまり、ドライブシャフトはシーズン中5回も折れた。ポテンシャルアップができぬまま、トラブルと修理を繰り返して2004年シーズンは幕を閉じた。この結果はチームORCのみならず、ドライバーを務めた出水田自身にとってもツライものだったろう。
三木流セットアップで快進撃がはじまる
「いろいろな角度から勝てるマシン作りに挑戦したい」と心機一転して2005シーズンに望んだチームORCは、まずドライバーをチェンジした。数名のシードドライバーが候補にあがるなか、三木を選んだ理由はいくつかある。ドライビングテクニックや人気、そしてイチバン重用視したのは彼のセッティング能力。2004年の活躍はたんにテクニックがあるだけでなく、マシンのセットアップに関わってきたトップシークレットのスタッフとしての腕を買ったワケだ。三木がこのZ33をはじめて走らせたのは、第1戦の予選前日の公式練習日。ほとんどぶっつけ本番の状態で「1年間D1で熟成されただけあってある程度のドリフトは問題なくできる。でもコレで勝てるか、と聞かれたら答えはノー。ベスト10まではイケるかもしれないけど、ベスト8はムリ」というのが第一印象だったという。物資と時間の少ないアメリカラウンドで、三木はとりあえずリヤのバネレートを16キロにあげて高速ドリフトに対応し、見事9位に入賞した。そして続く第2戦ではさらにバネレートをあげ、いままで3キロ〜3・5キロだったエア圧を4キロに設定。タービンもK5‐700Rからエキゾーストハウジングがひとまわり小さいK5‐660Rに変更し、前戦をうわまわる6位に入賞した。三木のセッティング方向はことごとく当たり、周囲のZへの評価は一転した。しかし第3戦で恐れていたトラブルが連発する。公式練習日にLSDがケースごと脱落したのだ。なんとか修理して出走した1回戦でこんどはエンジンブロー。このリタイヤで三木はシード落ちが決定。次戦オートポリスはひさびさの予選からのチャレンジとなってしまった。
コンスタントにベスト4そして年内1勝が目標
エンジンブローを経て、Z33は大幅に進化するチャンスを得た。第3戦と第4戦のインターバルが長いのもタイミング的によかった。大きな変更点はエンジンを2.8リッター化したことと、ホリンジャー製ミッションを搭載して、ファイナルギヤを3.5から4.1にしたことだ。エンジンはフルブーストに達する5000回転までのレスポンスをよくするため、クロス化されたギヤはパワーバンドのキープしやすさを狙った作戦。とくにギヤセッティングにかんしては「運転が忙しくなっちゃいそうだけど、それはボクが対応すればいいだけのこと。運転技術は努力でどうでもなるけど、エンジンは努力じゃ変わらないから」と三木が強く要求して実現した部分だ。ほかにも、LSDやドライブシャフトなどの駆動系パーツにGT‐R用を使い強化しトラブルを防止している。しかし残された課題も少なくない。ボディはもちろんフル補強されているんだけど、三木はフロントとリヤの剛性バランスが悪いとかんじている。しかしフロントの剛性をこれ以上あげるのは現実的ではないため、リヤ側をコントロールして合わせていくことになるそうだ。そして軽量化。現在1370キロの車重を1200キロ台前半まで絞りたいという。「エンジンとミッションの変更でどうにか3位にまで入れる実力は得た。課題を解消すればトップ争いに加われるようになると思う。目標はコンスタントにベスト4。そして年内1勝」と力強く語るチームORC。後半戦の巻き返しに期待したい。
ENGINE
第3戦でのエンジンブローを機に、BNR32のRB26DETTをベースにHKSの2.8Lキットでボアアップしたニューエンジンを搭載。最大馬力は変わらないが、パワーバンドが大きく広がった。600馬力を効果的に使うには、そこまで到達する時間をいかに短縮するかがキーポイントになるとの考えからだ。少しでもフロントの剛性を増すために、ワンオフのタワーバーを装着。スポット増しは可能なかぎり施してあった。
ENGINE
タービンはブリッツのK5‐660Rタービン。お台場まで使っていた700Rとくらべるとエキゾーストハウジングが小さい。これも少しでもブーストの立ち上がりを早めようという狙いからだ。フルブーストになるのは5000回転くらいから。レブリミットはマージンを多めに取って8000回転に設定している。
ENGINE
冷却パーツはすべてARC製。発熱量の大きいRB26だけど、Vマウントのおかげで水温はいくら走っても100度に到達することはないそうだ。油温管理も2基がけしたオイルクーラーで万全。ラジエター横の黒いコアはパワステクーラーだ。フロア下にはデフクーラーとガソリンクーラーも装着しているぞ。
   
DRIVE-TRAIN
トランスミッションにも変更あり。昨年はトラスト6速、そして今年は各ギア比がクロスしているホリンジャーに変更。同時にファイナルギアも3.5から4.1に。ギヤ比の変更は三木が強く希望したという。
DRIVE-TRAIN
第2戦、第3戦とLSDが脱落するトラブルが連発した。Z33はリヤ側からの固定ボルトが1本なのが原因だったようで、現在は固定ボルトが2本のGT‐R用LSDに変更されている。リヤメンバー部にボルトの固定穴を増設したあとが見える。ドライブシャフトなどもGT‐R用になったことで「いつ飛ぶかわからなかった」という駆動系がキッチリ強化された。
INTERIOR
コクピットは昨年からほとんど変更されていない。三木本人もあまりドラポジにはこだわらないタイプ。デフィの追加メーターは水温、油温、油圧。「よく見るのはアナログメーターの3つくらい。スタックに表示されるデータはあまり見ない。見にくいし」と三木。唯一の弱点はAピラーがジャマで追走のときに相手のマシンが見えないこと。ガナドールミラーの付け根の開口部からよく覗いているそうだ。センターコンソール左のメーターはガソリンの残量メーター。その横にはネココーポレーションのA/F計。その下にはブリッツのブーストコントローラーとキルスイッチ。赤いボタンはスターターだ。
INTERIOR
助手席側にあるサイドブレーキレバーは遠すぎるため、運転席側に移動され、レバー自体の長さも延長。最近のD1ではサイドも多用するため、引きやすさは重要なポイントだ。その横にあるレバーはブレーキバランサー。フロントにプロジェクトμの4ポッドキャリパーとローターを装着したらフロントが効きすぎてしまったようで、現在はいちばんリヤよりにしている。
INTERIOR
10点式のロールバーはクロモリ製。現在の仕様ではリヤの剛性がフロントよりも格段に高いので、クルマが2分割されたような動きになってしまっているという。ストラットタワーをつなぐ補強バーは純正でも装着しているんだけど、軽量化と剛性のバランスを取るために取りはずす可能性もある。安全タンクはATL製だ。
   
FOOT WORK
車高調は今年からDG-5を使う。スプリングはフロント16キロリヤ12キロから、フロントリヤともに16キロを試して、現在はフロント20キロリヤ18キロまでレートアップ。これでもまだやわらかすぎるそうで、さらなるレートアップかスプリング自体の変更も考えている。ちなみに減衰力はずっと最強。これもセッティングの幅を持たせるために、現在の最強設定が5段から6段目になるように仕様変更する予定だ。切れ角アップはワッシャーのみ。フロントまわりの軽量化のため、メンバーは肉抜きされている。マウント類はすべてリジット化だ。
   
 
EXTERIOR
フロント、サイド、リヤの各バンパー、前後フェンダーやボンネット、GTウイングは全てトップシークレット製のGフォースエアロ。トレッドは前後片側50ミリ拡大され、600馬力のハイパワーを確実に路面に伝える。フロントバンパーはロングノーズのタイプ2。フロントガラスをのぞいてすべてアクリルウィンドウに交換されている。ボディに貼られたパイナップルグラッフィクはマナピーこと鈴木学氏の経営するMSRのデザインだ。
   
  取材協力:トップシークレット 043-216-8808 http://www.topsecretjpn.com/   ○ このページの先頭へ