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Garage ITO with Pro Stock Racing R34GT-R [BNR34] From OPTION [2007.08]
Garage ITO with Pro Stock Racing
R34GT-R
BNR34
筑波最速の
歴史を動かす者
今年で設立23年目をむかえた老舗ショップ『オートアクティブ ガレージ伊藤』が 来シーズンのスーパーラップに向けて新戦力を開発中だ。
目標タイムは、なんとHKSが産み出した怪物CT230R(53秒589)を超える53秒111。
一見無謀ともとれる挑戦だが、ページをめくっていけばその目標タイムは夢などではなく、現実的な数値であることを理解してもらえるはずだ。
4WDシステムを活かしたままRB26ユニットを超ミッドマウント
 片側50mmワイド化された前後フェンダーや、大きく突き出たアンダーディフューザー。フルドライカーボンによって形成されたそれらのエクステリアパーツから生み出されるシルエットは、スーパーGTマシンを彷彿とさせるものであり、まるで内に秘めたチカラを抑えきれないでいるかのようだ。
「完成までにはもうすこし時間がかかりそうだけど、妥協はぜったいにしたくないんだ。とくにこだわっているのは重量バランスと4WDを活かした足まわりかな」。間もなく産声をあげるであろう怪物の心臓部に手をかけながら伊藤氏が語る。
 HKSキャパシティアップキット・ステップ3にVカムプロおよびTO4Zタービンを組みあわせ、トルクフルに生まれ変わった2・8L仕様のパワーソースは、バルクヘッドを貫通し200mmちかくミッドマウント化されている。そう、4WDのままで、だ。
 FR化したうえでの話ならわかるが、GT-Rで4WDシステムを活かしたままエンジン搭載位置を変更するなど前代未聞。なぜなら、GT-Rのフロントトランスファーはオイルパンと一体のため、そのままエンジン搭載位置を変更したのでは、フロントドライブシャフトの位置も動いてしまうからだ。極端にいえば、エンジンを後方に動かす=ホイールベースが短縮してしまうことを意味する。
 さて、この難関に対してガレージ伊藤が導きだした解決策をわかりやすく説明すると、それは「オイルパンはノーマルの位置にとどめたままシリンダーブロックからうえの部分のみを後方へと移動させる」というものだ。
文章にしてしまうとカンタンそうに思えるが、オイルパンに大改造をほどこしたうえオイルの吸い上げ方式を根本から見直す必要がある、まさに『大手術』なのである。とはいえ、これによりGT-R特有のフロントヘビーに起因するフロントタイヤへの負担を軽減させることが可能というわけだ。
 そしてサスペンション。旋回性能を限界まで引き上げるために、サスメンバーは前後ともパイプフレームによってつくり替えられ、片側50mmのワイドトレッド化を実現。それにあわせてアーム類は取り付け位置をふくめてフルで見直され、ジオメトリーの最適化と同時に、サスセッティングを容易に行なえるよう、前後ともにマルチリンクから特殊なダブルウィッシュボーンへとサス形式が変更されている。ちなみにこのパートを手がけたのは、サスペンションのスペシャリスト集団『イケヤフォーミュラ』だ。
 そのほか、ボディから駆動系などすべてのパートに渡ってコンマ1秒を削り取るための策がこうじられているのだが、偉業を達成した歴代スーパーラップマシンたちと照らし合わせても、見劣りするどころかココまで手の入った車両など数台しか思い浮かばない。
「まだ走らせてないからなんともいえないけど、目標タイムはズバリHKSサンのランエボを抜く53秒111。モーテックでアテーサの駆動制御もしようと考えているんだけど、それがうまくハマればタイムは出せると思うよ」と、伊藤氏は闘志を燃やす。
 来シーズンのスーパーラップ、まちがいなくガレージ伊藤は台風の目になるだろう。そしてこのマシンが真価を発揮したときこそ、筑波最速の歴史が動く瞬間になるのかもしれない。
ENGINE
ニスモGTブロックにHKS製エンジンパーツをフルで組みこみ、中速トルク重視のハイパワーユニットを創造。目標出力はMAX700ps/レブリミット9000rpmだ。また、レスポンスを徹底追求した結果、ARC製インタークーラーはパイピングをショート化するべくラジエターの手前(エンジン側)に配置。エンジンおよびアテーサの制御はモーテックM800が担う。 オリジナルの45Øエキマニを介して装着されるタービンは、バツグンのブーストレスポンスを誇るTO4Z。まもなくフレッシュエア導入用のカーボンインテークダクトが設けられる予定だ。
SUSPENSION
片側50mmのワイドトレッド化を敢行したフロントサスペンション。その数値を軸に、アップライトはノーマルのままジオメトリーを最適化するため、サードリンクを廃した上下2本の横に渡したアームで構成されるダブルウィッシュボーンへとサス形式を変更。さらに、アッパーアームからはリンクを介してボディへとアームを剛結してレバー比も変更されている。ダンパーはクァンタムCRだ。 純正比100mmちかい車高ダウン量を基準にアーム稼働領域を限界まで引き上げるべく、サブフレームの位置を大きく持ち上げたうえ、フロント同様パイプフレームによってサスメンバーを構築。また、サス形状も2本のアッパーリンクは1本のアッパーアームへと変更され、ダブルウィッシュボーンへと改造されている。なお、トレッド拡張幅はフロントとおなじ片側50mmだ。
FRONT UNDER SECTION REAR SECRTION
トランスファーの位置はノーマルのまま、エンジン本体のみを後方に200mmちかく移動させる。そんな知恵の輪のような難解をクリアするべく、オイルパンはフロントにセットされていたオイルだまりをなくして後方に新規製作したうえ、オイルストレーナーを加工するなど大がかりな手術がほどこされている。 ドライカーボン製トランクをはずすとGTウイング用の強固なマウントが顔を出す。その奥にはATL製30L安全タンクがパイプフレーム上に配置され、ノーマルのリヤシート位置にコレクタータンクおよび燃料ポンプが整然とマウントされている。
WHEEL&TIRE AERO - DYNAMICS
ホイールはレイズが誇る軽量モデル『ボルクレーシングTE37』(FR10.5J)で、タイヤはA048(FR255/35-18)をセット。ホイールの隙間からチラリとのぞくブレーキはブレンボ製モノブロックシステム(F6ポット+380Øローター R4ポット+355Øローター)だ。 想定車重は1200kg中盤。そんなFD3Sなみの軽量ボディを路面へと押し付ける役目を担うエアロダイナミクスへのコダワリもハンパではない。スーパーGTマシンを参考にし、空力優先ですべてを造作。その結果、フロントアンダーパネルはバンパーから100mmちかく飛び出たカタチで装備され、リヤにもバンパー下部に垂直フィンを持つ強固なディフューザーがセットされている。かつてのシルエットフォーミュラのような迫力だ。
INTERIOR
必要最小限の機能パーツだけを残したソリッドなコクピットまわりの造作。メインメーターはモーテックM800とリンクするダッシュロガーだ。ミッションはホリンジャー6速シーケンシャル。シフトレバー脇には、前後スタビの効きを調整するレバーがそれぞれ独立して設けられている。  
取材協力:オートアクティブ ガレージ伊藤  大阪府茨木市島3-3-20  0726-37-8511  http://www.garage-ito.com○ このページの先頭へ