ASM S2000 Tsukuba Special AP1 From OPTION [2007.05] TOP > web マガジン > ASM S2000 Tsukuba Special AP1
筑波スーパーラップ攻略機
ASM YOKOHAMA
ASM S2000
Tsukuba Special AP1
NAにもかかわらず、他の追随を許さない圧倒的な旋回性能を武器にフルチューン4WD勢と真っ向勝負を繰り広げるS2000ベースの筑波スーパーラップ専用マシン。先ごろ叩きだした57秒488はあくまで通過点、ASMが5年がかりで完成させた至宝の筑波スペシャルが見据えているのは、56秒5なのである。
生命線は、他を圧倒する旋回性能の高さ
 2003年にNA初の筑波1分切りを達成し、その翌年には58秒台に突入。以来、熟成に熟成を重ねようやくたどり着いたのが、57秒488をマークするまでに戦闘力を高めたのが現仕様だ。
 見どころは盛りだくさんなのだが、まずは中速トルク重視で名門・戸田レーシングが開発したパワーソースから見ていこう。核となるのは3つのエンジンパーツからなる戸田オリジナルの『キャパシティアップ2400キット』なのだ。
 ピストンスカートに潤滑皮膜処理を施し、フリクションの低減および耐荷重性能を大幅に引き上げた87φ鍛造ピストン。フルフロータイプで高強度を誇るクロモリ製I断面コンロッド。そしてストロークが純正から16mmアップとなる100mmのフルカウンタークランク。これらのムービングパーツが組みあわさることによって、圧縮比12:1、総排気量2378ccという、ハイコンプのロングストローク型ユニットが生まれる。
 あわせてヘッド側にはポート研磨をほどこし、ハイカム(IN295度/EX290度)を導入したうえ、50φの4連スロットルシステムをドッキング。これにより最高出力は305psに達し、5000rpm〜8000rpmのワイドレンジで30kgmという大トルクを発生させることが可能になった。
 また、オイル供給方式をウエットサンプからドライサンプに切り替えている点も見逃せない。これについては「オイルパンを薄くしてエンジン搭載位置を下げることよりも、エンジン出力を100%引き出すためのドライサンプ化という意味合いが強いんです。油圧の安定は燃焼の安定を意味しますからね」と、ASM金山サン。
 つぎにエアロダイナミクス。ココがASM S2000の高い旋回性能を支えているポイントといっても過言ではない。装着しているエアロパーツおよびそれに付属する空力補助パーツはすべてドライカーボン製なのだが、造形上の考えかたは完全にレーシングマシンのソレ。
 ダウンフォースを生み出すために上面だけではなくフロア部にまで手を入れ、305psの出力を念頭にダウンフォースとドラッグのベスト値を計算。そうしてはじき出された空力効果、いわゆる“エアロダイナミック・グリップ”をベースとし、ボディおよびサスペンションを煮詰めて“メカニカル・グリップ”をバランスさせているのだ。
「筑波ではFRより4WDに歩があることはわかっています。それでもウチはウチのやりかたでFRの可能性を探っていきますよ。そしていつかはターボ化して4WDを超えたいですね」。笑顔の金山サンが発した言葉には、強い自信がみなぎっていた。
 それもそのはず、CT230Rやサイバーエボが230km/hまで加速する筑波の裏ストレートで、ASM S2000は186km/hと50km/hちかく差をつけられてしまう。しかしその先、つまりセクター3(最終コーナー手前からコントロールラインまで)では10秒046と、前述の4WD勢に肉薄する区間タイムを記録する。そしてその現象は筑波の全コーナーで起こっている。そう、300ps足らずのFRマシンが500ps級の4WDマシンに迫っているのだ。
 現仕様での限界点は56秒5とのことだが、目標達成までにさほど時間は必要ないだろう。その先にある戦い、筑波スーパーラップの最速争奪戦に打って出る日もちかいかもしれない。
ENGINE
エンジンは実測305ps/8000rpmを発揮する戸田レーシング製の2.4Lスポーツインジェクション仕様。そんな至宝のユニットを100%生かすべく、ミッションには400ps対応のヒューランド6速シーケンシャルを採用して、シフト操作の短縮をねらっている。 F-WIN3層ラジエターは右側にオフセットしたカタチでマウントされ、空いた左側スペースには、50φの4連スロットルへと外気を導入するための経路がもうけられている。
低重心化と油圧の安定をねらってオイル供給方式にはドライサンプを採用。そのため助手席位置にはエンジンオイルのリザーバータンクがマウントされている。
GROUND EFFECT CHASSIS
フロア部のつくりこみはすさまじいレベル。フロントバンパー下部にベンチュリートンネルをもうけたうえ、ボディ下面はドライカーボン平板でフラットボトム化。そしてリヤセクションに大型のディフューザーを設けて、グラウンドエフェクトによるマイナスリフト空力特性を手にしている。 38φのスチールで組まれたロールケージは前後のストラットタワーに直結。フルスポット増しはもちろん、応力が集中しやすいポイントにはリブ加工されたプレートで徹底補強を敢行。サスを積極的に動かすべくボディ剛性は究極にまで高められているのだ。それでいて、筑波のような中低速主体のステージには必要ないとの判断からストラットタワーバーは装着されていないのがおもしろい。燃料タンクは純正を廃し20Lの安全タンクをミッドに搭載する。
INTERIOR WHEEL & TIRE / AERO DYNAMICS
サーキットスペックらしくインテリアは超スパルタン。ダッシュボードはドライカーボン素材でリメイクされ、メインメーターもM-TECとの共同開発によるオリジナルのマルチビジョンメーターを搭載。このデジタルメーターはエンジン回転のほか、スピードや水温、油圧、電圧など、ドライバーおよびメカニックが必要な情報を集約してディスプレイすることができるスグレモノだ。 前後75mmのワイドフェンダー化によって、GT-R用のプロドライブ製GC-010G(FR 9.5J+15)&アドバンA048GS(265/35-18)という組みあわせが可能になった。これによりメカニカルグリップが飛躍したことはいうまでもない。

1030kgという車重を生み出す原動力となったエアロパーツは、ドライカーボン素材の『ASM I.S.Design GT-06』。デザインはレーシングマシンの空力理論を取り入れたものとなっており「レギュレーションがないぶん、ヘタなGTマシンよりも空力はうえ」とはASM金山サン。なお、このエアロはフルキットとして市販化を予定している(今年の秋ごろ発売予定)。
SUSPENSION / BRAKE
FRONT REAR サスはS耐スペックのザックス2WAYダンパーとハイパコ(F16kg/mm R18kg/mm)の組みあわせ。ダンパーはバンプ1に対してリバンプ2.5というリバンプを強めたセットアップとしたうえ、ピストンスピードに対して減衰がリニアに立ち上がるレスポンス重視の味つけに仕上げられている。また、フロントアッパーアームのピボットはピロ+ソリッドブッシュに変更され、取りつけ位置を数センチほどアップ。リヤにも同様のモディファイが施されている。

ブレーキはAPレーシング社製のキャリパーキット(F4ポット R2ポット)で、ローターは前後とも同社の330φ2ピーススリットを装着している。さらに強大なストッピングパワーを安定させるために、ブレーキローターにはフロントバンパー開口部からフレッシュエアを導入するためのホースがのびている。
取材協力:オートバックスASM横浜  045-629-0905  http://www.autobacs-asm.com/○ このページの先頭へ