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PitRoad M M-黄金(隼)GTO 金蔵3号 [Z16A] From OPTION [2006.12]
920psの 咆哮
PitRoad M
M-黄金(隼)GTO 金蔵3号 [Z16A]
販売面ではいまいちパッとしなかったものの、国産離れしたスタイルとそれに負けない走りで、いまだコアなファンを虜にしつづけているミツビシGTO。その魅力に魅せられたチューナー森下サンが長い年月をかけ産み出したGTO改ドラッグモンスター。その全貌に迫る。
3.1L+T88-38GKがもたらす戦闘能力
 アメリカの知人から森下サンのもとへとビデオレターが送られてきたのは、いまから半年前のこと。そこにおさめられていたのは、とある北米のドラッグコースで0-400mを9秒台で走りきるチューンドGTOの姿だった。
「衝撃を受けましたよ。ストックボディのチューンドGTOで10秒のカベを超えてしまったんですから。だってウチのベストタイムは10秒7ですもん。なんども巻き戻して見直しましたよ。スタートからゴールまでをストップウォッチで測ったりもしました」。
 超軽量化されているもののチューニング内容はストリートの延長線上、しかも装着されているパーツの大半はピットロードM製。そんなマシンがアッサリと10秒のカベを超えてみせた。森田サンは大きなショックを受けたのと同時に、ひとりのチューナーとして心に火をつけたことは言うまでもない。
 ゼロヨン9秒台を目指した森田サンの新たな挑戦がはじまったのは、それから間もなくのこと。
 かつてセントラルサーキットで10秒7を記録したときのエンジン、鍛造ピストンを組んだ6G72に、TD06L2タービンを2機がけした600ps仕様をアッサリ捨て、イチからエンジン製作に取り組んだのだ。
 まず腰下から。ハイブースト前提に、1mmオーバーサイズとなるオリジナルの92φ鍛造ピストンとH断面コンロッドを組み3100ccまでスケールアップ。クランクに関しては「無理に高回転化しなければ純正でもイケる」という森田サンの判断により、バランス取りした純正品を使用。
 つぎにヘッドまわり。オリジナル強化バルブスプリングを組んだうえIN&EXともに272度のハイカムをあわせているのだが、「6G72はもともと高回転型ではないトルク型のエンジンなんです。無理して8500rpm以上まわそうとするとロッカーアームが飛ぶし、コンロッドメタルも音を上げる」とのことから、無理なレブアップは試みず常用8000rpmに設定。そのほか、燃焼室形状変更をはじめ吸排気ポート加工など徹底的に手を入れ、中低速トルク型の強靭なエンジンをつくり上げた。
 そしてタービン。中速以降でのパンチ力とブーストの安定性を求めた結果、ツイン仕様からビッグシングル仕様へとシフトさせることを決意。そこでインマニを逆転させてエンジンルームにタービンスペースを確保したうえ、複雑なエキマニを介してトラスト最大級の風量を誇るT88-38GKをドッキング。EXハウジングには、ブーストの立ち上がりを優先して18cm²を採用している。
 そんな珠玉のパッケージをVプロでDジェトロ化し綿密にマネージメントを行うことで、最大出力は7500rpm時になんと920ps。トルクに至っては93kg-mを発生するモンスターユニットが完成した。
「意地でも9秒台に入れますよ。アメリカに負けたままでは悔しいですからね」。
 アタックは今冬から来春を予定している。GTOチューン第一人者としての意地とプライドをかけた戦いがまもなくはじまるのだ。
SPECIFICATIONS
■ENGINE&DRIVE-TRAIN
6G72改3.1L仕様  スペシャルポート加工&燃焼室加工  M-SPL-MFR92φ鍛造ピストン&H断面コンロッド&1.5mmヘッドガスケット&インマニ  トラストT88-38GK18L  タービン&タイプCウエストゲート  M-SPL-MFRカム(IN&EX272度)&強化バルブスプリング&オリジナルサージタンク&90φスロットル  1000ccインジェクター×6  HKS F-CON Vプロ改  トラスト プロフェック  M-SPL3層インタークーラー&3層ラジエター&16段オイルクーラー  MFRフロントパイプ&チタン戦闘機マフラー(90φ→100φ)  MFR-R3Cトリプルクラッチ&フライホイール  M-SPLフロントLSD  カーボン1ピースプロペラシャフト  他
■FOOTWORK
M-SPL車高調(F16kg R8kg)  M-SPLキャンバーアーム M-SPLブレーキキット&ホース&パッド
■TIRE&WHEEL
GYイーグル(FR265/35-18)  RAYSグラムライツ(FR9.5J-18)
■INTERIOR&EXTERIOR
ヴェイルサイドステアリング  レカロSP-G本革仕様×2  トラスト追加メーター  オートメーター  M-SPLファルコンフルエアロ  M-SPLカーボンドア&リヤゲート&ボンネット  LEDテール  アクリルウインドウ
ENGINE
チューニングパーツが皆無にひとしい6G72。ピットロードMでは時間をかけて専用エンジンパーツを開発して、6G72チューニングの可能性をさぐりつづけてきた。その集大成ともいえるのが今回の3.1Lハイブースト仕様なのだ。
FRONT REAR
SUSPENSION
トラクション重視のセッティングが施されたダンパーはアラゴスタベースのオリジナルドラッグモデル。バネはメルヴェでレートはF16kg、R8kgをセットしている。また、リヤにはオリジナルのキャンバーアームが取りつけられ、サスセッティングの幅を拡大しているのもポイントだ。
BRAKE
重量級ボディを受け止めるブレーキ系は大幅に強化され、フロント&リヤともにMFRグレッディーブレーキキットを装着している。詳細は、フロントが355mmローターに6ポットキャリパー、リヤは330mmローターに4ポットキャリパーという組みあわせだ。パッドもオリジナルのメタルとなる。
INTERIOR
シートは左右ともレカロSP-Gの本革仕様に交換。ダッシュボード中央部にはトラストのブースト/水温/油温/油圧/排気温度/燃圧計が整然とならび、その上に東名のA/F計をセット。またダッシュボード右側にはオートメーターが配置されている。
BODY WORK
リヤシートは軽量化のためにはずされているが、それ以外の内装トリムはノーマルのままだ。ロールケージはオリジナルのクロモリ5点式。そのほかのボディ補強としてはフロント&リヤにオリジナルのタワーバーをセットしている程度だ。
COOLING
インタークーラーはオリジナルの3層ツインタイプ。パイピングは100φだ。そのほか3層アルミラジエターや16段オイルクーラー、キャビテーション防止のウォーターポンププーリーなども装着され、大馬力を安定して出力させるように冷却系は徹底強化されている。
COOLING
中期ベースの後期仕様で、エアロはオリジナルの『M-SPLファルコン』キットをフルで武装。ヘッドライトはエアを導入するためのダクトが設けられている。軽量化にも余念がなくウインドウ類はアクリルに交換され、ドア&リヤゲート&ボンネットはカーボン製を使用している。車重は1500kgまでシェイプされている。
取材協力:ピットロードMマシンファクトリー  兵庫県姫路市安富町安志912  0790-66-4369  http://www.pitroadm.com/ ○ このページの先頭へ